相生株式会社を立ち上げたのは2015年。背景にあったのは、障がいのある子どもをもつ親御さんたちの深い不安でした。
「自分が死んだあと、この子はどうなるのか」 「いっそ一緒に死ねたら楽かもしれない」
そうした切実な声を耳にし、「自分にできることを」と立ち上げたのがグループホームの運営でした。
グループホームとは、障がいのある方が共同で生活する場。支援スタッフが常駐し、生活全般をサポートします。若い方では18歳から入居されることもあり、今では65歳まで幅広い年齢の方が暮らしています。
ホームに入居することで、生活リズムが整い、夜きちんと寝て、日中は就労支援施設で働くといった流れができるようになります。結果的に薬の量が減ったり、引きこもりの生活から一歩踏み出せたりと、確かな変化が見えてきます。
「お薬の量が減ったんです」と笑顔で話す親御さんの姿が、何よりの励みになっていると語ってくれました。
グループホームでの生活はうまくいっても、就労先とのミスマッチに悩む利用者も少なくなかったそうです。そこで、「だったら、自分たちでその人に合う仕事場を作ろう」と開設したのが、就労支援事業所ワクワクワークです。
調理作業や軽作業など、重度・軽度を問わず働ける仕組みを整え、毎日10人前後の利用者さんが通っているそうです。ひとりひとりに寄り添いながら「できること」を伸ばす姿勢が貫かれています。
会社を立ち上げてすぐの頃、資金繰りに大きく苦しんだそうです。通帳に残っていたのはたった154円。
「このままじゃ給料も払えない、保険料も払えない、もう終わりだ……」
そんな中、親からの支援や、仲間の紹介によって金融機関から融資を受け、なんとか危機を乗り越えることができました。スタッフもひとりも辞めず、一緒に経費削減に取り組んでくれたことが、今の礎になっていると感慨深く語ってくれました。
経営で大切にしているのは、「信頼して任せること」。創業当初は何でも自分でやろうとしていたそうですが、今ではスタッフに任せ、必要以上に口を出さないようにしています。
「最後の責任は社長が取る。でも、それまでは信じて任せる」
自由にやれる風土があるからこそ、スタッフが「やりがい」を感じられると考えています。なので、それを支えるために、現在はルールの整備にも力を入れています。任せられる、働きやすい環境こそ、会社の成長につながると考えているからです。
会社の理念は**「共に生きる社会を目指して」**。
一緒に働く仲間に対して、「この人とは働きたくない」と思ったことは一度もないそうで、来てくれた人全員と一緒に働きたいと思っています。
適材適所で強みを活かす配置を行い、誰もが価値ある存在として働ける。そんな職場をつくりたい——それが私の目標であり行動指針です。
相生株式会社では、独立支援にも力を入れ、フランチャイズやグループ会社として新たなチャレンジを応援する体制も整えています。一方で、長くこの会社で働きたいという方にとっても安心して働き続けられる環境づくりに力を注いでいます。
「ここで働いてよかった」と笑って言える会社にしたい。
そう語る社長の言葉には、利用者、スタッフ、そして地域への深い愛情と責任が込められていました。